一流大学を卒業した一流企業のエリート女性社員が、夜は娼婦として街角に立ち、
ついには惨めなアパートの空き部屋で娼婦として殺されてしまう、という、
小説も映画も真っ青な、ショッキングな出来事に、世のマスコミはこぞってこの事件を取り上げたものでした
人並みに興味をもっていた私は、佐野眞一さんのノンフィクション「東電OL殺人事件」と
桐野夏生さんの小説「グロテスク」を読みましたが、
でも、それ以上のものは雑誌などで読むぐらいの事でした
彼女が殺された渋谷の円山町という所は、昔からある遊興の街で、
渋谷の駅近く、東急デパート本店のすぐ近く、
超高級住宅地として知られる松涛にも近い、という、
いともアンバランスな所にあります
中学生の時から渋谷の学校に通って、渋谷の街には詳しい私でさえ、
近寄る事もない街………
そこに、つい最近、私は人生初の円山町界隈を散歩をしてみました
昼過ぎとはいえ、けばけばしいホテルが立ち並ぶ街
細い路地には、夜の男女の秘め事の余韻が残るかのような、そう思ってみるからでしょうか、妙に艶かしく、あやしげな空気が漂っています
実は、大きな道路を挟んだ反対側にあるネパール料理屋さんに行った帰り道、
渋谷駅に戻るよりも、このまま広い道を突っ切れば、円山町を通って、
井之頭線の神泉駅に行ける、そう思って、自分の抜群の地理カンを頼りに
初めての道を歩いて行った次第です
噂には聞く花街円山町
昼とはいえ、歩くのが気恥ずかしい様なホテル街です
方向感覚だけは素晴らしい私ですので、風に導かれながら井之頭線の神泉駅を目指して歩きました
途中、、 坂道の上に、小さな祠を発見
ん ん ん
確か、あの殺されたOLは、神泉駅のそばの坂の上のお地蔵さまの前で客を引いていた、
という、記述があったはず、、、、、
見ると、、私の目的地神泉駅はすぐ近くです
あ ここだ ここに、彼女が立っていたんだ
このお地蔵さまの前で、道ゆく男に声をかけ、ホテルに入り、
時には、駅のそばの駐車場の車の陰で男と事を交わしていた、、、、、、、
その駐車場でしょうか? 見れば、地蔵様と駅の間に駐車場もあります
15年も前に、なぜか夜毎ここに立ち、そして死んで行った一人の女性の事が、
急に 蜃気楼の様に浮かび上がって来ました
彼女は幸せだったのか不幸だったのか
なぜ、そんな生活を選んだのか、
他人にはわからない心の歪、、、、、、、、
その女性を想い、また、無罪を叫びながらいまだに獄中にいるネパール男性を思い、
お地蔵様にお祈りしてきました
殺人犯とされているネパール人ゴンビダさんがもし本当に冤罪であるならば、
早く開放され、彼と彼の家族に平安な生活が戻りますように
そうなれば真犯人を知っている彼女も、ちょっとはホッと出来るんじゃなかな、
なんて事を、思ったりしながら、
初めて利用する神泉駅から、下北沢の街へもどって行きました
近道を選んで、ちょっとした冒険心で歩いたホテル街円山町は、
私に考えもしなかった事件を思い出させてくれました
小さな小さな、東京新発見の散歩でした